【津波避難】最短ルートで逃げるには 線路は横断しても良い?
北海道内を走る列車の多くが海岸沿いを走っています。
しかし、津波が迫っているときにはその線路が住民の前に立ちはだかります。
シリーズ「命を守る」。
津波から避難する際の線路横断の可能性を考えます。
海沿いを走るJR花咲線。
太平洋に面した道東の厚岸町です。
海岸近くで魚をさばくのは三浦和子さん(83)です。
(三浦和子さん)「干したらいまのコマイが一番おいしいの。これはみそ汁にする」
日常生活で隣り合わせなのが、いつ来るかわからない津波。
しかし、三浦さんはある不安を抱えています。
(三浦和子さん)「危ないことは危ないんだよね、線路ここ走ってるからね。津波見てたら本当に他人事でないよね。来たらどうしようっていう頭はあるけど」
自宅が海岸と線路の間にあるため、避難する時は300メートル離れた踏切まで迂回しなければならないのです。
市街地に押し寄せる津波。
これは厚岸町が作成したシミュレーション動画です。
震度7の地震が発生したとき、およそ30分後には津波が到達。
河川や水路を伝って住宅街を飲み込み、到達から20分後にはマチ全体が浸水します。
マチの多くが海に面する厚岸町。
市街地には9メートルを超える津波が押し寄せ、花咲線より南の海岸部は5メートル以上浸水すると想定されています。
(宮崎記者)「大津波に見舞われたとき、沿岸部に住む住民が最短のルートで高台に避難するときに立ちはだかるのが、この線路です」
普段一般の人の立ち入りが禁じられている線路。
厚岸町では津波に限り、線路横断が可能な避難経路を1か所設けています。
(厚岸町危機対策室 吉田剛さん)「こちらがJRの避難階段につながる避難通路になっておりまして、宮園地区の住民が避難時に使われる避難経路になっております」
普段は施錠されている避難扉。
町の職員が鍵を開け誘導することになっていますが、JR厚岸駅の許可が必要です。
(厚岸駅 檜森亮駅長)「線路を横断して避難するというのは、列車と衝撃するリスクが大きいものになるので、必ず私たちの方でこちらの区間に列車が絶対に入ってこない措置をとってから避難していただくことが重要になる」
避難経路はおよそ30メートル。
砂利や線路に足をとられ転倒する可能性があり、走って渡るのは危険だといいます。
線路を渡った後、15メートルほどの階段を上がります。
(厚岸町危機対策室 吉田剛さん)「ここまで来ると津波の浸水区域外になるので、とりあえずは安全という形になります。ここから各避難場所に避難していただく形になる」
厚岸町は2013年、道内で初めて線路横断が可能な覚書をJRと締結。
今後も横断できる場所を増やしたい考えです。
(厚岸町危機対策室 吉田剛さん)「ほかの地区についても、JR沿線沿いに避難が困難と見込まれる区域がありますので、そこの区域の方々に津波到達時間内までに逃げていただくための避難経路として、今後JRと運用について協議させていただければと思います」
道内では太平洋側を中心に、少なくとも11市町が避難時の線路横断に向けた協議や検討を進めています。
しかし、室蘭市では安全上の課題が浮上しています。
旅客列車のみならず、貨物列車も行き来する室蘭線。
昼夜問わず多くの列車が走ります。
(室蘭市総務部防災対策課 武田学課長)「線路横断はいろいろ課題があるのかなと思っていまして、東室蘭駅周辺は単線じゃなくて複数線路があるので、安全に市民が渡れるルール作りが大事になってきますね」
巨大地震が発生したとき、9メートルを超える津波が予測される室蘭市。
深刻なのは東側の地区です。
室蘭線を越えた先に浸水区域外の地域がありますが、こ線橋が2か所に限られています。
住民は遠回りして避難しなければならず、さらに車の渋滞も予想されます。
東側地区の住民は、避難の時に線路を渡らせてほしいと10年前から市に要望しています。
橋本正敏さんもその一人です。
(橋本正敏さん)「線路を渡った段階から安全な場所になる。それでどんどん高くなっていくから、ここから先。ここを越えることが大事。JRも危険という問題がありますから、線路ですから。そう簡単には許可するということはできないんでしょうけど、何か考えて可能にできる方法があるんじゃないかなと思っている」
JRは地震が起きても乗客の緊急避難があるため、すぐに列車を止める保証はありません。
横断時の安全をどう確保するかが課題です。
(JR北海道 綿貫泰之社長)「(地震の)発生の状況によっては、列車はまだ動いている状況が想定されます。どういった形がいいのかを我々も検討しながら、地域の皆さんと話し合っていく」
専門家は線路横断が可能かどうか、地域に合わせて検討すべきと指摘します。
(北海道大学地震火山研究観測センター 高橋浩晃教授)「一言で線路横断といっても、場所によって全然条件が変わってくると考えています。やはり室蘭本線のように非常に多くの列車が走っているところでは相当難しいのではないかと思っております。安全にどうすれば横断できるか、そして果たして安全に横断できるのかということを、まずは技術的にきちんと検討することが必要」
室蘭市の橋本さんです。
安全な線路横断の方法を早急に検討してほしいと市に訴えています。
(橋本正敏さん)「一日も早く線路を横断できる仕組みを作っていただけたらありがたい。避難困難区域の人たち、この線路を渡るだけで多くの命を救うことができる」
津波から逃れるために線路横断は可能なのかー
迅速な避難と安全確保の両立が求められています。
(2024年2月20日放送)
しかし、津波が迫っているときにはその線路が住民の前に立ちはだかります。
シリーズ「命を守る」。
津波から避難する際の線路横断の可能性を考えます。
海沿いを走るJR花咲線。
太平洋に面した道東の厚岸町です。
海岸近くで魚をさばくのは三浦和子さん(83)です。
(三浦和子さん)「干したらいまのコマイが一番おいしいの。これはみそ汁にする」
日常生活で隣り合わせなのが、いつ来るかわからない津波。
しかし、三浦さんはある不安を抱えています。
(三浦和子さん)「危ないことは危ないんだよね、線路ここ走ってるからね。津波見てたら本当に他人事でないよね。来たらどうしようっていう頭はあるけど」
自宅が海岸と線路の間にあるため、避難する時は300メートル離れた踏切まで迂回しなければならないのです。
市街地に押し寄せる津波。
これは厚岸町が作成したシミュレーション動画です。
震度7の地震が発生したとき、およそ30分後には津波が到達。
河川や水路を伝って住宅街を飲み込み、到達から20分後にはマチ全体が浸水します。
マチの多くが海に面する厚岸町。
市街地には9メートルを超える津波が押し寄せ、花咲線より南の海岸部は5メートル以上浸水すると想定されています。
(宮崎記者)「大津波に見舞われたとき、沿岸部に住む住民が最短のルートで高台に避難するときに立ちはだかるのが、この線路です」
普段一般の人の立ち入りが禁じられている線路。
厚岸町では津波に限り、線路横断が可能な避難経路を1か所設けています。
(厚岸町危機対策室 吉田剛さん)「こちらがJRの避難階段につながる避難通路になっておりまして、宮園地区の住民が避難時に使われる避難経路になっております」
普段は施錠されている避難扉。
町の職員が鍵を開け誘導することになっていますが、JR厚岸駅の許可が必要です。
(厚岸駅 檜森亮駅長)「線路を横断して避難するというのは、列車と衝撃するリスクが大きいものになるので、必ず私たちの方でこちらの区間に列車が絶対に入ってこない措置をとってから避難していただくことが重要になる」
避難経路はおよそ30メートル。
砂利や線路に足をとられ転倒する可能性があり、走って渡るのは危険だといいます。
線路を渡った後、15メートルほどの階段を上がります。
(厚岸町危機対策室 吉田剛さん)「ここまで来ると津波の浸水区域外になるので、とりあえずは安全という形になります。ここから各避難場所に避難していただく形になる」
厚岸町は2013年、道内で初めて線路横断が可能な覚書をJRと締結。
今後も横断できる場所を増やしたい考えです。
(厚岸町危機対策室 吉田剛さん)「ほかの地区についても、JR沿線沿いに避難が困難と見込まれる区域がありますので、そこの区域の方々に津波到達時間内までに逃げていただくための避難経路として、今後JRと運用について協議させていただければと思います」
道内では太平洋側を中心に、少なくとも11市町が避難時の線路横断に向けた協議や検討を進めています。
しかし、室蘭市では安全上の課題が浮上しています。
旅客列車のみならず、貨物列車も行き来する室蘭線。
昼夜問わず多くの列車が走ります。
(室蘭市総務部防災対策課 武田学課長)「線路横断はいろいろ課題があるのかなと思っていまして、東室蘭駅周辺は単線じゃなくて複数線路があるので、安全に市民が渡れるルール作りが大事になってきますね」
巨大地震が発生したとき、9メートルを超える津波が予測される室蘭市。
深刻なのは東側の地区です。
室蘭線を越えた先に浸水区域外の地域がありますが、こ線橋が2か所に限られています。
住民は遠回りして避難しなければならず、さらに車の渋滞も予想されます。
東側地区の住民は、避難の時に線路を渡らせてほしいと10年前から市に要望しています。
橋本正敏さんもその一人です。
(橋本正敏さん)「線路を渡った段階から安全な場所になる。それでどんどん高くなっていくから、ここから先。ここを越えることが大事。JRも危険という問題がありますから、線路ですから。そう簡単には許可するということはできないんでしょうけど、何か考えて可能にできる方法があるんじゃないかなと思っている」
JRは地震が起きても乗客の緊急避難があるため、すぐに列車を止める保証はありません。
横断時の安全をどう確保するかが課題です。
(JR北海道 綿貫泰之社長)「(地震の)発生の状況によっては、列車はまだ動いている状況が想定されます。どういった形がいいのかを我々も検討しながら、地域の皆さんと話し合っていく」
専門家は線路横断が可能かどうか、地域に合わせて検討すべきと指摘します。
(北海道大学地震火山研究観測センター 高橋浩晃教授)「一言で線路横断といっても、場所によって全然条件が変わってくると考えています。やはり室蘭本線のように非常に多くの列車が走っているところでは相当難しいのではないかと思っております。安全にどうすれば横断できるか、そして果たして安全に横断できるのかということを、まずは技術的にきちんと検討することが必要」
室蘭市の橋本さんです。
安全な線路横断の方法を早急に検討してほしいと市に訴えています。
(橋本正敏さん)「一日も早く線路を横断できる仕組みを作っていただけたらありがたい。避難困難区域の人たち、この線路を渡るだけで多くの命を救うことができる」
津波から逃れるために線路横断は可能なのかー
迅速な避難と安全確保の両立が求められています。
(2024年2月20日放送)
「STVニュース」
7/8(月)15:11更新