【胆振東部地震】発生から5年 家を失った男性への支援とは
胆振東部地震で液状化による被害を受けた札幌市清田区の住宅街。
地盤工事でかつての街並みを取り戻しましたが、もとの家に帰れなくなった人もいます。
地震で家を失った男性の5年から、被災者ひとりひとりに寄りそう大切さを考えます。
射的やボールすくいを楽しむ子どもたち。
5年前、液状化の被害を受けた清田区里塚の住宅街です。
地震やコロナ禍で中止となっていた夏祭りが5年ぶりに開かれました。
(子ども)「みんなで仲良くできて楽しい」
(住民)「災害の時は仲間の家が崩れていくのを見てかわいそうでどうにもならなかったけど、これだけよく復興したと思います」
(久保アナウンサー)「こちらは広い範囲で液状化現象が起きています・陥没によってでしょうか、家が傾いています。大変危険な状況です」
5年前の胆振東部地震。
里塚地区や北広島市の大曲地区では液状化現象が発生しました。
泥に埋まって身動きがとれない人も。
地盤沈下により、里塚地区では80軒を超える住宅が半壊以上の被害をうけました。
地震から3か月経つと住宅の解体が始まり…
翌年の夏には解体工事が終了。
地盤改良工事や公園の復旧が進み…
いまでは新しい家が立ち並び、元の姿を取り戻しています。
新たに引っ越してくる若い世帯も多いといいます。
(里塚中央町内会 盛田久夫さん)「にぎやかな子どもたちの声も聞こえるようになったし、喜ばしい限りです」
しかし、元の生活に戻れなかった人もいます。
(菊地道隆さん)「よろしくお願いします」
かつて里塚地区に住んでいた菊地道隆さん71歳です。
いまは里塚から1キロほど離れた賃貸のマンションで生活しています。
(菊地道隆さん)「写真だけはちゃんと拭いてやっているんだけどね」
妻の登志子さんは地震から2年後に、がんで他界。
最後まで元の家に戻りたがっていたといいます。
(菊地道隆さん)「相当精神的ショックでしばらくは立ち上がれないくらい大変だったからね」
私たちが菊地さんと出会ったのは地震が起きた当日。
変わり果てた我が家の姿に戸惑いを隠せずにいました。
(菊地道隆さん)「鍵開いているはずなんだけどな」
まだ新しい洗面台。
実は、地震のわずか1週間前に900万円をかけて自宅のリフォームを終えたばかりでした。
しかし倒壊の危険があると判定され、二度と住むことができなくなったのです。
地震の翌年、家は解体。
新しい家を建てることも考えましたが、リフォーム工事のローンが残っていたことに加え、年齢の関係で融資を受けることが叶わず、住み慣れた土地ごと手放さざるを得ませんでした。
(菊地道隆さん)「悔しさは残りますよね。何のために苦労してやってきたのかと。やっぱりでひとりで大声出して泣きたかったですよ」
地震から5年。
いまでも時折里塚地区を訪れるという菊地さん。
(菊地道隆さん)「よくおやつを持って子どもたちと遊んでいたな。すっかり変わっちゃったよね」
どうすればこの場所に戻ることができたのかー
思い返されるのは、相談に乗ってくれる窓口の少なさです。
(菊地道隆さん)「右往左往でどこに相談していいかわからない、合同での説明ばかりでしょ最初。その人その人に応じた支援を最後までやってほしい」
被災者の中には年齢や収入などを理由に住まいの再建を断念する人がいます。
専門家は被災者ひとりひとりに寄り添い、サポートする仕組みづくりが大切だと話します。
(災害支援に詳しい 宇都彰浩弁護士)「住まいの再建など被災者の希望を踏まえたうえで、使える支援制度があるのかないのか助言できる専門家が必要」
高齢者やローンがある人が住宅を再建するための制度はいくつかあります。
代表的なのは被災者のローンを減免する制度や、再建する家を担保に高齢者でも融資を受けられる「災害復興住宅融資」です。
自治体が弁護士や建築士などの専門家と連携し、さまざまな制度を紹介できる仕組みづくりが大切だといいます。
(災害支援に詳しい 宇都彰浩弁護士)「いろんな情報があるが、被災者の方が自分で得るのはなかなか難しい。災害時のようなみんなが困っているときには、行政や支援する側が出向いて制度を使えるようにする必要がある」
この日、菊地さんが向かったのは妻・登志子さんのお墓参り。
月に数回、登志子さんの墓前で1時間ほど最近の出来事を報告するのが菊地さんの日常です。
(菊地道隆さん)「結構さみしがりだったからね、だからかわいそうにと思って。一時泣いてばかりいたからね、自分だけなんで何でなんでわたしだけだとか」
突然奪われた、終の棲家での穏やかな生活。
地震から5年が経ちましたが、悲しみが癒えることはありません。
(菊地道隆さん)「支援策のようなあれができれば、あそこを立て替えて住んでいれば、また少しは変わったのかもしれない、お母さんどうなったのかなと考えることはある」
液状化が奪った平穏な日常。
誰もが元の生活を取り戻せるよう、柔軟で積極的な支援が求められています。
(2023年9月5日)
地盤工事でかつての街並みを取り戻しましたが、もとの家に帰れなくなった人もいます。
地震で家を失った男性の5年から、被災者ひとりひとりに寄りそう大切さを考えます。
射的やボールすくいを楽しむ子どもたち。
5年前、液状化の被害を受けた清田区里塚の住宅街です。
地震やコロナ禍で中止となっていた夏祭りが5年ぶりに開かれました。
(子ども)「みんなで仲良くできて楽しい」
(住民)「災害の時は仲間の家が崩れていくのを見てかわいそうでどうにもならなかったけど、これだけよく復興したと思います」
(久保アナウンサー)「こちらは広い範囲で液状化現象が起きています・陥没によってでしょうか、家が傾いています。大変危険な状況です」
5年前の胆振東部地震。
里塚地区や北広島市の大曲地区では液状化現象が発生しました。
泥に埋まって身動きがとれない人も。
地盤沈下により、里塚地区では80軒を超える住宅が半壊以上の被害をうけました。
地震から3か月経つと住宅の解体が始まり…
翌年の夏には解体工事が終了。
地盤改良工事や公園の復旧が進み…
いまでは新しい家が立ち並び、元の姿を取り戻しています。
新たに引っ越してくる若い世帯も多いといいます。
(里塚中央町内会 盛田久夫さん)「にぎやかな子どもたちの声も聞こえるようになったし、喜ばしい限りです」
しかし、元の生活に戻れなかった人もいます。
(菊地道隆さん)「よろしくお願いします」
かつて里塚地区に住んでいた菊地道隆さん71歳です。
いまは里塚から1キロほど離れた賃貸のマンションで生活しています。
(菊地道隆さん)「写真だけはちゃんと拭いてやっているんだけどね」
妻の登志子さんは地震から2年後に、がんで他界。
最後まで元の家に戻りたがっていたといいます。
(菊地道隆さん)「相当精神的ショックでしばらくは立ち上がれないくらい大変だったからね」
私たちが菊地さんと出会ったのは地震が起きた当日。
変わり果てた我が家の姿に戸惑いを隠せずにいました。
(菊地道隆さん)「鍵開いているはずなんだけどな」
まだ新しい洗面台。
実は、地震のわずか1週間前に900万円をかけて自宅のリフォームを終えたばかりでした。
しかし倒壊の危険があると判定され、二度と住むことができなくなったのです。
地震の翌年、家は解体。
新しい家を建てることも考えましたが、リフォーム工事のローンが残っていたことに加え、年齢の関係で融資を受けることが叶わず、住み慣れた土地ごと手放さざるを得ませんでした。
(菊地道隆さん)「悔しさは残りますよね。何のために苦労してやってきたのかと。やっぱりでひとりで大声出して泣きたかったですよ」
地震から5年。
いまでも時折里塚地区を訪れるという菊地さん。
(菊地道隆さん)「よくおやつを持って子どもたちと遊んでいたな。すっかり変わっちゃったよね」
どうすればこの場所に戻ることができたのかー
思い返されるのは、相談に乗ってくれる窓口の少なさです。
(菊地道隆さん)「右往左往でどこに相談していいかわからない、合同での説明ばかりでしょ最初。その人その人に応じた支援を最後までやってほしい」
被災者の中には年齢や収入などを理由に住まいの再建を断念する人がいます。
専門家は被災者ひとりひとりに寄り添い、サポートする仕組みづくりが大切だと話します。
(災害支援に詳しい 宇都彰浩弁護士)「住まいの再建など被災者の希望を踏まえたうえで、使える支援制度があるのかないのか助言できる専門家が必要」
高齢者やローンがある人が住宅を再建するための制度はいくつかあります。
代表的なのは被災者のローンを減免する制度や、再建する家を担保に高齢者でも融資を受けられる「災害復興住宅融資」です。
自治体が弁護士や建築士などの専門家と連携し、さまざまな制度を紹介できる仕組みづくりが大切だといいます。
(災害支援に詳しい 宇都彰浩弁護士)「いろんな情報があるが、被災者の方が自分で得るのはなかなか難しい。災害時のようなみんなが困っているときには、行政や支援する側が出向いて制度を使えるようにする必要がある」
この日、菊地さんが向かったのは妻・登志子さんのお墓参り。
月に数回、登志子さんの墓前で1時間ほど最近の出来事を報告するのが菊地さんの日常です。
(菊地道隆さん)「結構さみしがりだったからね、だからかわいそうにと思って。一時泣いてばかりいたからね、自分だけなんで何でなんでわたしだけだとか」
突然奪われた、終の棲家での穏やかな生活。
地震から5年が経ちましたが、悲しみが癒えることはありません。
(菊地道隆さん)「支援策のようなあれができれば、あそこを立て替えて住んでいれば、また少しは変わったのかもしれない、お母さんどうなったのかなと考えることはある」
液状化が奪った平穏な日常。
誰もが元の生活を取り戻せるよう、柔軟で積極的な支援が求められています。
(2023年9月5日)
「STVニュース」
9/8(金)9:49更新