3月14日放送「私が『現代の食医』を目指すようになった理由」
2021年4月5日(月)
3月14日放送「私が『現代の食医』を目指すようになった理由」
陶:今日はゲストをお迎えしましたよ。北海道大学医学部医学科5年 高桑雅弘さんです。
高:よろしくお願いします
山:よろしくお願いします。この番組にはこれまでゲストの方を何度もお迎えしてますが、今回は随分とお若い方で…
陶:そう、最年少ですよね。私の出身の「医局」〜自分の所属している講座〜が北海道大学病院の内科Ⅱというところで、腎臓だったり膠原病だったり糖尿病だったり内分泌だったり…といったところを専門にしているのですが、そこに学生として実習に来た高桑さんが、私の後輩の先生に「腎臓と栄養学に本気で興味があるんだけど、どこに行ったら勉強できますか?」と相談してくれたんですね。それならH・N・メディックに行っておいでと紹介されて当院に実習に来て下さったのがたしか1年ちょっと前だったとおもいます。高桑さんは石川県金沢市出身で、「食医」に興味があると教えてくれました。「食医」というのはかつて中国にいた皇帝の健康を食事からつくる医師のことなのだそうですが、彼は皇帝のようなお金や地位のある人に限らず、全ての人がアクセスできる「現代の食医」を目指して勉強中なのだということです。
山:おもしろそう・・それでは高桑さん、今日のテーマは?
高:「私が『現代の食医』を目指すようになった理由」です。オトナに対する食育から生活習慣病のない世の中を作りたいな、と思いまして、「現代の食医」を目指しています。2019年から1年休学し、イタリアに留学しまして、料理の勉強をしたりもしていたんですれけども、もともとは小学校に入る前の話から料理自体にはすごく興味があって。自分のお店を持ちたいな、という夢があったんですよね。留学も大学生になったらしたいとも思っていまして、せっかくだから自分の夢を叶えられる留学にしたいなというのがひとつ、理由としてはありました。
陶:そこに、「医師」というワードが全く出てこない(笑)
高:そうですね。自分が子供の頃、本当に好きだったことを一度掘る必要があって、そのときに自分の小さいときの想いにたどり着いたというか・・
陶:お医者さんになりたい!という想いはどこから?
高:父が医師ということもあるんですが、中学生くらいでしょうか、「人のためになる仕事をしたい」と思って、そのときに近くに医師である父がいて、その友人の医師の皆さんが、とてもおもしろい方が多く、医師という職業に対しての印象がすごく良かったというのはありますね。
陶:開拓的な将来の選択をしましたね!自分のやりたいことを組み合せてやる、っていう。
高:そうですね、好きなものと好きなものを組み合わせて・・・医者と何かを掛け算したいとはずっと思っていました。
陶:普通、子供の頃って掛け算はいきなり思いつかないですよね
山:そうですね・・・両手に余るほどの夢をひとつずつ持ってるだけですね
陶:人はだいたいレール乗るものですけれど、自分でレールを敷くタイプの人ときどき、いますね。
高:イタリアのフィレンツェに行ったんですけど、イタリアやギリシャなど、地中海のエリアで、健康的な食事として世界遺産にもなっている「地中海食」というものを学びたかったのがチョイスした理由なんです。もうひとつ言うと、自分自身に食べ物で良い想い出がいくつかあったんです。一番はじめは祖母にいっぱい食べてるのを褒められたというのがまずあるんですね。ぼんやりと憶えているんですけど「食べっぷりいいね」って言われたのが嬉しかったのと、いっぱい食べたら喜ばれるんだとそのときの私は解釈して。そこからよく食べる小学生で、2年生くらいまでは肥満で、職員室に呼び出されるくらいだったんです。
陶:私も告白しますけど小学3年生のときに肥満で呼ばれかけましたよ・・・
山:おふたりとも今はすごくスマートでいらっしゃるんですけど・・・でも、子供の頃はいっぱい食べるのが仕事ですよね!
高:あとは、小学4年生のときに1日だけ学校に行けなかったことがあって。いろいろ勘違いをされてそれにショックを受けて「今日は学校に行かない!」と言ったんですけど、母親はそれを許してくれて、ランチに連れ出してくれたのがイタリア料理のお店だったんです。そこですごく守られてるなっていう感覚を得ることができて、それを今でも憶えていて。食事の場の持っている力みたいなものをあのイタリア料理のお店で教えてもらったんだな、ということもあってイタリア料理には思い入れがあるんですよね。
山:みなさん思い当たるところ、あると思います。食事をしているその時間に救われた、とか、ずっと想い出に残っている方も多いと思います。・・ただですよ、私すごく不思議に思うのが、食を通した医療と聞くと、インド!とか、中国!とかの印象があるんですが、ここで「イタリア」だったんですね?
高:そうですね、はじめは中国かなあ、と思って。これはいろんな先生にお話を聞くなかである先生が「せっかくだから学生のうちにしかできない留学をしてもいいんじゃない?」と言っていただいて、そのときに意思が固まったというか、やっぱりイタリア料理が好きだし、地中海食というものは医学の論文も多いんですよね。健康的にどうやらいいんじゃないか、ということで世界中から研究されている対象だったので、これを自分が料理人という視点でみてきて日本に持って帰ってきたら(みんなあんまり聞いたことがないので)面白いことができるんじゃないかな、っていうのはありましたね。
陶:私、「自分が面白いって思っていることを真剣にやった結果、それが人に何か還元できるものになった」っていうのが人の営みの産むサイクルとしては一番ハッピーなんじゃないかって思っているんですよね。「自分がつらいことを犠牲だと思ってやったうえに成り立つのが医療である」みたいな雰囲気も世の中にはちょっとあるかもしれないんですけど、実はそうじゃない。ハッピー×ハッピーがいいじゃないかって思っているので、高桑君の将来設計は、動機としてはすごく健全。あとは、イタリアの話ばっかりしているけど、イギリスにも行きましたよね。
高:ご縁あって。
陶:のご縁というのが、この番組にときどき出てくる今村先生なんです。高桑君がヨーロッパに行く期間のうち何ヶ月間か自由に学ぶ期間があるということで、どこに行ってなにをしようかというような相談を私にもちかけてくれたのので、英国のケンブリッジ大学で栄養疫学をご専門に活躍されている今村文昭先生をご紹介したんです。“科学のしもべ、Dr.今村“の教えを受けてきたまえ!みたいな感じで・・・(今村先生は科学に対して非常に真摯な姿勢で研究道に邁進されているという方、とトーコ先生は認識しています)
高:そうなんです。トーコ先生のおかげで今村先生につながり、ケンブリッジに行って参りました。
陶:今村先生の手料理もごちそうになり!
高:ホントにおいしくて!イギリスの伝統的なものを食べさせて頂いて。すごくおいしかったです。
山:イタリア、イギリスと豊富な留学生活だったと思うんですけど、実際どうでしたか?
高:いま振り返ると楽しかったという想い出しかなくて。自分がいかに料理が好きか、食べ物が好きかってことは留学に行って実感したっていうところがあって、言葉が通じないとか、環境が違ってうまくいかないこともあったんですけど。仕事という形でレストランにインターンで入っていた時、仕事をしていると自分がすごく楽しくなってくるんですよね。まあ、人間関係云々とかはあったけれど、食材さわってると楽しいからOK!という感じで半年間過ごせたなって思っています。
陶:きっと前世はシェフだったのか?みたいな感じ、ありますよね。彼、食事のことを話しているときの顔が、もうずっと笑っているんですよ。そして、さらに料理留学に加えて、文部科学省の海外渡航支援奨学金プログラム「トビタテ!留学JAPAN」の奨学生としての活動もあったとか。
高:はい、奨学金の書類を書くときになぜその留学をあなたがするんですか?ということをたくさん聞かれるような書類があったんですが、そこでさっきお話したような「なんでイタリアに行くの?」というようなところを掘りさげてみました。そういった原体験を将来の礎にできたことについては、ホントに良かったなって思ってますね。
陶:ちょっと話題は変わりますが、高桑君は腸内細菌にも興味があるんですよね?
高:そうですね。イタリアのほうで料理の留学をして、そのあとアメリカのほうに腸内細菌の研究をしにいくというようなプランを組んでいたんですよね。これは私自身のルーツが発酵食品にある、っていう理由がありまして。母親の実家が味噌とか醤油とか地元のほうで作っている蔵をやっていて、おじさんが工場長なんです。おじさんは発酵食品にも熱いし、腸内細菌のことにも詳しいし、という方で。おもしろいのが「日本初の甘酒博士」っていうところで・・・
陶:甘酒博士!?
高:甘酒に関する論文で博士号をとっている、という。それくらい「発酵」が大好きなおじさんで、会うたびに「腸内細菌や発酵食品は体にいいんだぞ!」という話をされていたのを聞いていたことは、きっと今自分が「食医」というものにたどり着いたひとつ大きな理由だと思っています。
山:なるほど・・・「腸内環境を整えよう!」って言葉、今よく耳にしますもんね。
陶:自分のルーツと自分の将来をここまでガチガチに絡め合わせて発展させている若者ってあまり見たことないって思うんですけれど、こうやって話しているとあっという間に時間が過ぎてしまいますね。今日は彼に「現代の食医」を目指して精力的に勉強中!というお話をしていただきましたけども、高桑さんはなんと食育のビジネスを立ち上げた、という話ですよ。それはまた来週聞いてみましょうか。
高:よろしくお願いします
山:よろしくお願いします。この番組にはこれまでゲストの方を何度もお迎えしてますが、今回は随分とお若い方で…
陶:そう、最年少ですよね。私の出身の「医局」〜自分の所属している講座〜が北海道大学病院の内科Ⅱというところで、腎臓だったり膠原病だったり糖尿病だったり内分泌だったり…といったところを専門にしているのですが、そこに学生として実習に来た高桑さんが、私の後輩の先生に「腎臓と栄養学に本気で興味があるんだけど、どこに行ったら勉強できますか?」と相談してくれたんですね。それならH・N・メディックに行っておいでと紹介されて当院に実習に来て下さったのがたしか1年ちょっと前だったとおもいます。高桑さんは石川県金沢市出身で、「食医」に興味があると教えてくれました。「食医」というのはかつて中国にいた皇帝の健康を食事からつくる医師のことなのだそうですが、彼は皇帝のようなお金や地位のある人に限らず、全ての人がアクセスできる「現代の食医」を目指して勉強中なのだということです。
山:おもしろそう・・それでは高桑さん、今日のテーマは?
高:「私が『現代の食医』を目指すようになった理由」です。オトナに対する食育から生活習慣病のない世の中を作りたいな、と思いまして、「現代の食医」を目指しています。2019年から1年休学し、イタリアに留学しまして、料理の勉強をしたりもしていたんですれけども、もともとは小学校に入る前の話から料理自体にはすごく興味があって。自分のお店を持ちたいな、という夢があったんですよね。留学も大学生になったらしたいとも思っていまして、せっかくだから自分の夢を叶えられる留学にしたいなというのがひとつ、理由としてはありました。
陶:そこに、「医師」というワードが全く出てこない(笑)
高:そうですね。自分が子供の頃、本当に好きだったことを一度掘る必要があって、そのときに自分の小さいときの想いにたどり着いたというか・・
陶:お医者さんになりたい!という想いはどこから?
高:父が医師ということもあるんですが、中学生くらいでしょうか、「人のためになる仕事をしたい」と思って、そのときに近くに医師である父がいて、その友人の医師の皆さんが、とてもおもしろい方が多く、医師という職業に対しての印象がすごく良かったというのはありますね。
陶:開拓的な将来の選択をしましたね!自分のやりたいことを組み合せてやる、っていう。
高:そうですね、好きなものと好きなものを組み合わせて・・・医者と何かを掛け算したいとはずっと思っていました。
陶:普通、子供の頃って掛け算はいきなり思いつかないですよね
山:そうですね・・・両手に余るほどの夢をひとつずつ持ってるだけですね
陶:人はだいたいレール乗るものですけれど、自分でレールを敷くタイプの人ときどき、いますね。
高:イタリアのフィレンツェに行ったんですけど、イタリアやギリシャなど、地中海のエリアで、健康的な食事として世界遺産にもなっている「地中海食」というものを学びたかったのがチョイスした理由なんです。もうひとつ言うと、自分自身に食べ物で良い想い出がいくつかあったんです。一番はじめは祖母にいっぱい食べてるのを褒められたというのがまずあるんですね。ぼんやりと憶えているんですけど「食べっぷりいいね」って言われたのが嬉しかったのと、いっぱい食べたら喜ばれるんだとそのときの私は解釈して。そこからよく食べる小学生で、2年生くらいまでは肥満で、職員室に呼び出されるくらいだったんです。
陶:私も告白しますけど小学3年生のときに肥満で呼ばれかけましたよ・・・
山:おふたりとも今はすごくスマートでいらっしゃるんですけど・・・でも、子供の頃はいっぱい食べるのが仕事ですよね!
高:あとは、小学4年生のときに1日だけ学校に行けなかったことがあって。いろいろ勘違いをされてそれにショックを受けて「今日は学校に行かない!」と言ったんですけど、母親はそれを許してくれて、ランチに連れ出してくれたのがイタリア料理のお店だったんです。そこですごく守られてるなっていう感覚を得ることができて、それを今でも憶えていて。食事の場の持っている力みたいなものをあのイタリア料理のお店で教えてもらったんだな、ということもあってイタリア料理には思い入れがあるんですよね。
山:みなさん思い当たるところ、あると思います。食事をしているその時間に救われた、とか、ずっと想い出に残っている方も多いと思います。・・ただですよ、私すごく不思議に思うのが、食を通した医療と聞くと、インド!とか、中国!とかの印象があるんですが、ここで「イタリア」だったんですね?
高:そうですね、はじめは中国かなあ、と思って。これはいろんな先生にお話を聞くなかである先生が「せっかくだから学生のうちにしかできない留学をしてもいいんじゃない?」と言っていただいて、そのときに意思が固まったというか、やっぱりイタリア料理が好きだし、地中海食というものは医学の論文も多いんですよね。健康的にどうやらいいんじゃないか、ということで世界中から研究されている対象だったので、これを自分が料理人という視点でみてきて日本に持って帰ってきたら(みんなあんまり聞いたことがないので)面白いことができるんじゃないかな、っていうのはありましたね。
陶:私、「自分が面白いって思っていることを真剣にやった結果、それが人に何か還元できるものになった」っていうのが人の営みの産むサイクルとしては一番ハッピーなんじゃないかって思っているんですよね。「自分がつらいことを犠牲だと思ってやったうえに成り立つのが医療である」みたいな雰囲気も世の中にはちょっとあるかもしれないんですけど、実はそうじゃない。ハッピー×ハッピーがいいじゃないかって思っているので、高桑君の将来設計は、動機としてはすごく健全。あとは、イタリアの話ばっかりしているけど、イギリスにも行きましたよね。
高:ご縁あって。
陶:のご縁というのが、この番組にときどき出てくる今村先生なんです。高桑君がヨーロッパに行く期間のうち何ヶ月間か自由に学ぶ期間があるということで、どこに行ってなにをしようかというような相談を私にもちかけてくれたのので、英国のケンブリッジ大学で栄養疫学をご専門に活躍されている今村文昭先生をご紹介したんです。“科学のしもべ、Dr.今村“の教えを受けてきたまえ!みたいな感じで・・・(今村先生は科学に対して非常に真摯な姿勢で研究道に邁進されているという方、とトーコ先生は認識しています)
高:そうなんです。トーコ先生のおかげで今村先生につながり、ケンブリッジに行って参りました。
陶:今村先生の手料理もごちそうになり!
高:ホントにおいしくて!イギリスの伝統的なものを食べさせて頂いて。すごくおいしかったです。
山:イタリア、イギリスと豊富な留学生活だったと思うんですけど、実際どうでしたか?
高:いま振り返ると楽しかったという想い出しかなくて。自分がいかに料理が好きか、食べ物が好きかってことは留学に行って実感したっていうところがあって、言葉が通じないとか、環境が違ってうまくいかないこともあったんですけど。仕事という形でレストランにインターンで入っていた時、仕事をしていると自分がすごく楽しくなってくるんですよね。まあ、人間関係云々とかはあったけれど、食材さわってると楽しいからOK!という感じで半年間過ごせたなって思っています。
陶:きっと前世はシェフだったのか?みたいな感じ、ありますよね。彼、食事のことを話しているときの顔が、もうずっと笑っているんですよ。そして、さらに料理留学に加えて、文部科学省の海外渡航支援奨学金プログラム「トビタテ!留学JAPAN」の奨学生としての活動もあったとか。
高:はい、奨学金の書類を書くときになぜその留学をあなたがするんですか?ということをたくさん聞かれるような書類があったんですが、そこでさっきお話したような「なんでイタリアに行くの?」というようなところを掘りさげてみました。そういった原体験を将来の礎にできたことについては、ホントに良かったなって思ってますね。
陶:ちょっと話題は変わりますが、高桑君は腸内細菌にも興味があるんですよね?
高:そうですね。イタリアのほうで料理の留学をして、そのあとアメリカのほうに腸内細菌の研究をしにいくというようなプランを組んでいたんですよね。これは私自身のルーツが発酵食品にある、っていう理由がありまして。母親の実家が味噌とか醤油とか地元のほうで作っている蔵をやっていて、おじさんが工場長なんです。おじさんは発酵食品にも熱いし、腸内細菌のことにも詳しいし、という方で。おもしろいのが「日本初の甘酒博士」っていうところで・・・
陶:甘酒博士!?
高:甘酒に関する論文で博士号をとっている、という。それくらい「発酵」が大好きなおじさんで、会うたびに「腸内細菌や発酵食品は体にいいんだぞ!」という話をされていたのを聞いていたことは、きっと今自分が「食医」というものにたどり着いたひとつ大きな理由だと思っています。
山:なるほど・・・「腸内環境を整えよう!」って言葉、今よく耳にしますもんね。
陶:自分のルーツと自分の将来をここまでガチガチに絡め合わせて発展させている若者ってあまり見たことないって思うんですけれど、こうやって話しているとあっという間に時間が過ぎてしまいますね。今日は彼に「現代の食医」を目指して精力的に勉強中!というお話をしていただきましたけども、高桑さんはなんと食育のビジネスを立ち上げた、という話ですよ。それはまた来週聞いてみましょうか。