海底トンネルにカメラが潜入!間近を走る北海道新幹線 老朽化が課題の「青函トンネル」の現状は
青函トンネルにカメラが潜入!
北海道と本州のつなぐトンネルは道民の生活に欠かせません。
しかし、開業から35年以上経ち、老朽化がクローズアップされています。
きょうは普段見ることのないルートで地上から青函トンネルへ。
そこで見た「大動脈」の現状をレポートします。
(記者)「すごく近いです!」
海の底を新幹線が走る!
カメラが捉えた「日本で一番長い海底トンネルのいま」とは…
青函トンネルの“その先”に迫ります。
海底から100m「青函トンネル」に潜入
津軽海峡を抱く福島町。
このマチに、青函トンネルにつながる入口があることはあまり知られていません。
「吉岡斜坑口」。
ここが海底トンネルとの接点です。
(JR北海道 函館新幹線工務所 片寄祐也さん)「こちらのケーブルカーに乗って、青函トンネルの中に入っていきたいと思います」
(記者)「トンネルにつながる入口が開いてきました」
ケーブルカーがトンネルに向かって、ゆっくりと進んでいきます。
この先が海の底だと思うと、不思議な高揚感も沸いてきます。
その深さは、津軽海峡の海底から100m!
ケーブルカーで進むことおよそ5分。
青函トンネルにたどり着きます。
(記者)「トンネルの中に入ってきました。風が通っていて涼しいが湿度が高くじめじめとしています」
トンネルの中は常に換気されていますが、この時の湿度は74%。
至る所で染み出る水が、ここは海の底だ…と物語っています。
旅客と物流…北海道民の大動脈
(記者)「実際に新幹線が通る本線に到着しました。青函トンネルはとても高いです。この上がちょうど海と陸の境目あたりということで、トンネルの先が青森県側になります」
全長およそ54キロメートルの青函トンネル。
その高さはおよそ8メートルで、3階建てのビルがすっぽり入る大きさです。
その時、暗闇の向こうからー
(記者)「新幹線が近づいてくる音が響いています」
このときの時速は160キロ!
実は、青函トンネルの中ではスピードを落としています。
その答えはすぐにわかりました。
(記者)「青函トンネルは新幹線だけでなく、貨物列車も通る物流の大動脈となっています」
すれ違いは貨物列車に与える影響が大きく、新幹線が速度を制限しているのです。
(JR北海道 函館新幹線工務所 片寄祐也さん)「通常、新幹線は夜間に線路のメンテナンスをする作業時間帯があるが、貨物列車が走っていることによってメンテナンスをする時間を確保することが大きく苦労している点です」
海の底ゆえ、万一の際の避難所などの維持・管理も欠かせません。
これも大きな特徴です。
34人が犠牲に…完成まで20年以上
この巨大なスケールのトンネル工事が始まったのは、いまから60年前。
当時の熱気を昨日のことのように語り継ぐ歴史の“証人”がいます。
福島町に住む菊地謹一さん88歳です。
青函トンネルの地質調査などに携わりました。
(菊地謹一さん)「(当時は)みんなが青函トンネルを掘るんだと、本州とのレールを一本にするんだという気持ちはみなさん持っていた」
1964年に始まった青函トンネルの工事に携わった人の数・のべ1400万人。
世界最高の技術を結集させたものでしたが、海底での工事は苦難の連続。
貫通までおよそ20年の間に、度重なる事故で34人が命を落としました。
(菊地謹一さん)「貫通した時に、みなさんはとにかく一心の喜びです。トンネルが完成したんだと、本州と北海道がつながった、その喜びでいっぱいだった」
菊地さんがぜひ見せたいものがあると言います。
工事に携わった人の名前が書かれた日の丸の旗です。
(菊地謹一さん)「青函の思い出になる大きな宝物。耐用年数が100年と言われているけど、100年のものを200年でも使えるように維持をして、日本のために使っていただきたい」
維持管理費は年間40億円前後 負担の行方は…
青函トンネルが開業して36年ー。
菊地さんの思いとは裏腹に、解決すべき課題は少なくありません。
(JR北海道 函館新幹線工務所 片寄祐也さん)「これは青函トンネルで湧き出している湧水です。これをポンプで地上に排出する」
トンネルの水没を防ぐために地上に排出する量は、1分間におよそ20トン。
過酷な環境のもと、一部はさびが進むなど老朽化は深刻です。
(JR北海道 函館新幹線工務所 片寄祐也さん)「JRのほかの新幹線にはない複雑な構造を持っているので、そういったメンテナンスは非常に苦慮している」
JR北海道が負担する青函トンネルの維持管理費は、年間40億円前後。
修繕費全体のおよそ1割にあたる計算です。
(JR北海道 綿貫泰之社長)「当社にとっても少なからぬ金額であり、また青函トンネルは旅客輸送だけでなく物流にとっても非常に大切なものだと認識している」
専門家は青函トンネルの“その先”について、2つのポイントを指摘します。
(北海道大学公共政策大学院 石井吉春客員教授)「少なくともJR北海道とJR貨物の費用負担の関係性はもう一度適切な見直しをすべき。青函トンネルが、一定程度お金の稼げるトンネルにするにはどうするかという議論を、これからしていかなくてはならないと思う」
北海道と本州を結ぶ鉄路。トンネルの先に見える光は…。
道民の生活を支える大動脈を今後どう維持していくか、改めて考えていかなくてはなりません。