マッチョ求む!介護施設が「筋トレも勤務時間・プロテイン代も支給」する深~い理由 北海道
鍛え上げられたこの肉体!
この“マッチョ”な人材が、深刻な人手不足に悩むある業界の救世主になるかも…と全国で注目されています。
北海道にも2024年7月に初上陸した、マッチョが活躍する意外な施設とはー。
激賞!トレーニング “マッチョな介護士”
札幌市の鈴木拓己さん31歳。
週に5日・2時間のトレーニングで…
この体を作り上げますが、これが仕事にも大いに役立っています。
鈴木さんの本業は…
(鈴木拓己さん)「介護士です」
(鈴木拓己さん)「調子どうですか?」
(入居者)「まあまあですね」
(鈴木拓己さん)「朝よりいい?」
6人の入居者の介助や生活支援をしている鈴木さん。
トレーニングを始めて2年になります。
(鈴木拓己さん)「お酒大好きで、2年前のお腹です。ちゃんとポッコリです。最初はダイエット目的で始めました。それが高じて筋トレが楽しいと目覚めた」
介護の現場でもトレーニングの成果は随所にー
(鈴木拓己さん)「重い荷物を持ち上げる場合、筋トレのフォームと似ている。筋トレしているからこそ正しい持ち上げ方を知っている」
(カメラマン)「掃除している時も、姿勢が垂直だった」
(鈴木拓己さん)「体の使い方がうまくなったのと、トレーニングが役に立っているかなと思います」
なぜ…筋トレは勤務時間、プロテイン代も支給
鈴木さんがそこまで筋肉にこだわるのは、実はこの介護施設が今までなかったものだからです。
それはー
「日本一マッチョが多い介護の会社」。
この施設は名古屋市の企業が運営。
2024年7月、道内に初進出しました。
なぜ“マッチョの介護士”にこだわるのか。
運営会社の社長の狙いとはー?
(ビジョナリー 丹羽悠介社長)「こういう(マッチョな)人たちが介護の仕事をしてくれてたら、周りの見る目やイメージが変わるんじゃないかと思って、カッコいいマッチョたちを会社に集めようと」
トレーニングは昼休みの昼食にも及びます。
(鈴木拓己さん)「きょうはコメが350グラム、胸肉150グラム。タンパク質の量と糖質の量を気にしています」
この会社では、ボディビルの全国大会で優秀な成績をおさめる介護士は“一軍”となり、待遇もよくなるといいます。
(記者)「一軍を目指す?」
(鈴木拓己さん)「そうですね。まだまだほど遠いですけど」
仕事が終わり、鈴木さんが向かう先は当然…
(鈴木拓己さん)「最高ですよね。福利厚生としてついてくるので、ありがたく使わせていただいています」
さらに一軍に上がると、この1日2時間の筋トレ自体も勤務時間として認められ、その上、プロテイン代・月2万円も支給されます。
その効果は、てきめんー
(ビジョナリー 丹羽悠介社長)「(求人の)応募数は断然に上がっています。年間で1000件近く応募数をいただいて。(介護職は)飽き性の人には向いていない仕事。毎日つらいことをコツコツコツコツ、本当に少しの変化を楽しんでいける性格の人たちはめちゃくちゃ向いている。それがスタッフ内でも、利用者に対してもポジティブな空気が生まれる」
(鈴木拓己さん)「カッコいい介護士になりたい。(入居者に)ここに住んでたら安心という風に思われたらいい。まだまだなので筋トレも介護もコツコツと、これからです」
ここでも深刻!人手不足「介護はインフラ」
ユニークな戦略の背景には、介護業界が抱える深刻な人手不足があります。
北海道でも「介護に必要な人の数」は年を追うごとに増えるのに、「介護職に就く人」の数はわずか2年後でも2万人も足りなくなる、さらに2040年には実に5万人以上も不足する…ということはグラフを見ても明らかです。
(渓仁会総務人事部 佐藤秀幸部長)「介護職に至っては採用が難しくなってきている。今後日本人だけで乗り切るのは難しいと感じています」
そう不安を吐露するのは、札幌市手稲区の介護老人福祉施設です。
深刻な人手不足ー。
そこで、2023年から外国人の採用に踏み切りました。
いまは5人が働いています。
21歳のナンさん。
ミャンマーから来日してもうすぐ1年になります。
ナンさんは母国で日本語を学びながら、介護の現場で働いていました。
(入居者)「すごく親切ですし、言葉も何でも知っているので私たちも言いやすいですね」
(渓仁会総務人事部 佐藤秀幸部長)「外国籍の職員がいないと回らない状況まできた。結果的には採用に踏み切ってよかった。買い物を支援したり、レクリエーションで海や回転寿司に行ってみたり、仕事とプライベートが充実していれば長く働いてもらえると思っていますし、生活のサポートも大事だと思っています」
(ナンさん)「いまより日本語を頑張って、介護福祉士の試験を受けて介護福祉士として働きたいです」
深刻な人手不足に悩む介護業界。
しかし、手をこまねいているわけではなく、それぞれが人材確保に躍起です。
しかし専門家は、事業者頼みでは本質的な解決にならないと喝破します。
キーワードは「介護はインフラ」です。
(小樽商科大学ビジネススクール 藤原健祐准教授)「行政としても連携をうまく進めて、人・モノ・金・情報をスムーズに流してマネジメント(効率的に活用)できる体制をつくっていく。そうすれば今まで個々で苦しんでいたものが解消される可能性はあるので、連携が重要。(介護を)社会のインフラとして残していく必要がある」
マッチョ介護士に外国人の介護士。
ユニークで前向きな取り組みは、いっぽうで介護現場の深刻な現状や未来を映し出していると言えそうです。