“ホールケーキ500円”に秘められた瀬山和子さんの「心意気」物価高ものかは!札幌市
2024年は幅広い分野で値上げの動きが見られました。
「物価高」が続く中、クリスマスケーキを500円で提供する店があります。
安さを実現するためには、ある思いがありました。
物価高に救世主!安さの秘密は工場に…
(吉岡記者)「物価高が続くなか救世主です。クリスマスケーキを税込なんと500円で販売しています」
イチゴがたっぷり乗ったケーキがなんと500円。
さらに、生クリームがたっぷり塗られたイチゴのタルトも800円と、驚きの値段で販売されています。
(吉岡記者)「口に入れた瞬間ふわふわですね。生地の優しい甘味とイチゴの酸味がものすごく相性がいいですね。500円のケーキとは思えないくらいおいしいです」
このケーキが並んでいるのは、大通駅構内にあるピアハーブです。
この安さの秘密は製造している工場にありました。
毎朝6時から、工場はフル稼働でケーキを作っています。
ほぼ機械は使わず手作りです。
(瀬山和子さん)「手でやると空気がすごく入る、ふわっとなるんです」
仕入れからメニューの考案までを1人で行う瀬山和子さんです。
生地に使っている小麦粉は北海道・江別産。
2024年は物価高に悩まされたといいます。
(瀬山和子さん)「一時かなり上がったんですけど、今は小麦粉(の値段)が下がってきた」
値上げは「ナンセンス」と言い切る“心意気”
2024年9月、スーパーでは小麦粉の値段がおよそ10%大幅に値上げされました。
10月には2024年で最大の2911品目が値上げされるなど、生活に打撃を与えました。
中でも食卓への影響が大きかったのは、コメの高騰です。
商品棚からコメが消え、パニック買いをした人も。
いわゆる「令和の米騒動」とまで言われました。
そして、ケーキづくりには欠かせないバターも高騰。
各メーカーが2025年1月からさらに値上げする見込みです。
物価高の中で安さを実現するヒミツはなんでしょうか。
(瀬山和子さん)「1年前から業者と話し合いしながら予約していく。それがなかったら安くはできないですね」
工夫を凝らして完成させた生地が焼きあがるとー
イチゴをたっぷりとのせていきます。
価格の上がる冬ではなく、夏にまとめて契約することで仕入れ値を抑えているといいます。
さらに、この店独自の材料もー
(瀬山和子さん)「寒天です。(本来使うのは)ナパージュっていうんですけど、(この店では)寒天でつくっている」
一般的な店では、ケーキのツヤを出すために「ナパージュ」というゼリー素材を使いますが、瀬山さんはより安い寒天で代用。
一方、タルトにはジャムやカスタード、そして値段が高騰している生クリームがたっぷりと塗られます。
全て自家製にすることで値段を抑えています。
ここまで安くするのはなぜなのでしょうか。
(瀬山和子さん)「やっぱりお客さんの懐具合が豊かでなければ、こちらもそれに沿って値段を決めていかなくちゃいけない。ケーキの原料の値段が高いから(ケーキの値段を)上げていくことはナンセンスだと思いますね」
障害あるスタッフも…作り手にも寄り添う職場
おいしさをそのままに、いかに手ごろなケーキを提供できるかー
瀬山さんはお客さんの立場を考えるだけでなく、共に働くスタッフにも静かに寄り添います。
これには深いワケが…。
工場の中をよく見ると…手話で会話するスタッフの姿がー
80歳の但野さん、耳は聞こえません。
他にもさまざまな障がいのある人が働いています。
心臓にペースメーカーを入れている國谷さんは、耳が聞こえない人と会話するため、自ら手話を覚えたといいます。
(國谷弥生さん)「YouTubeとかですね、あとは手話サークルに行ったりだとか」
その手話で、記者と但野さんをつなげてくれました。
(吉岡記者)「但野さんは80歳と聞きました。ものすごく元気ですね」
(國谷弥生さん)「ありがとうって言ってます」
(吉岡記者)「ここで働いていてどうですか?」
(國谷弥生さん)「いいと思います、(手話で)話が通じるので。通じるので安心できます」
瀬山さんは、それぞれの障がいに合わせて仕事内容を調整しながら、温かく見守っていたのです。
瀬山さんの会社は元々、花の栽培やアレンジを手掛けていました。
(瀬山和子さん)「材料を整えるのに1人でやっていたものですから、そこに障がい者のお母さんが来られて、うちの娘を使ってくれないかと」
それをきっかけに障がいのあるスタッフを受け入れはじめ、今では170人以上が助け合って働いています。
安くおさえる工夫だけではなく、作り手のことまで考えられたクリスマスケーキが、大通駅構内の店舗に並びます。
よく店に通うというお客さんはー
(常連客)「すごくお手頃で助かります。気軽に買えます。家族で食べようと思います」
物価高に負けない知恵と工夫…商品に込められた思い
売り場にはケーキ以外にもお値打ち価格の商品が並んでいました。
1人用のおせちです。
11種類の具材が入って1200円。
お重の中には栗きんとん・数の子・黒豆など定番が並びます。
中でも力を入れているのが、昆布巻きです。
どの世代も美味しく食べられるよう、薄めの味付けで素材の味をいかします。
この安さを実現するために、瀬山さんはほぼ毎日朝2時に起きて市場に向かいます。
新鮮な野菜や魚をより安く仕入れるために人知れず奮闘しているのです。
日々さまざまな総菜をつくっている工場では、余った食材を無駄にしないよう、まかない弁当を作っています。
その値段、なんと100円。
物価高という逆風の中、お客さんのために値段をおさえて、スタッフに対しても還元します。
(瀬山和子さん)「やはり職業人として、自分の生計を立てられる人になってほしいなと思います。それはなれると思いますね」
(吉岡記者)「この職場は(従業員にとって)どういう場所でありたい?」
(瀬山和子さん)「皆さん黙っていますけど、孤独感は味わっていると思う。やっぱり人間にとって孤独というのが、一番つらいんじゃないかと思います。近づく・そばに寄るということが、なかなか一歩(施設の)外に出ればしてもらえませんので、(この職場は)なくてはならない場所になっている」
500円のクリスマスケーキ。
物価高でも奮闘する店の裏側にあったのは、お客さんとスタッフどちらも笑顔にする優しい想いでした。