北海道の港町で“超早期肺がん”を発見した最先端「がんリスク検査」とは?カギは「AI」「尿」
いま注目の「がんリスク」の検査キット。
世界初の画期的な技術で、がんの早期発見につながるといいます。
がんの検診率が著しく低い北海道。
その現状の打破につながるのか。最先端そして世界初、そのうえ手軽。
注目の「がんリスク検査」とはー
「症状全くない」超早期がんを発見できた理由-
この日、北大病院で手術を受ける60代の女性。
肺にがんの疑いが見つかりました。
(60代女性)「全然症状がない中でびっくりしたのと、早く見つかってよかったなっていうのと、実感がまだわかない感じ」
(北海道大学病院呼吸器外科 加藤達哉教授)「上葉及び下葉の肺がん疑い。どちらも部分切除」
手術は予定通り終了。
(北海道大学病院呼吸器外科 加藤達哉教授)「今検査に出していますけど、肺がんで間違いないと思います」
この女性が手術前に撮った映像です。
がんの疑いが見られたのは、一瞬だけ見えるこの部分。
「超早期がん」ともいえる、この病変を発見できた理由。
そのヒントは、手術後の診察室でのやり取りのなかにー
(北海道大学病院呼吸器外科 加藤達哉教授)「どうぞお座りください。どうですか、調子の方は?」
(60代女性)「調子はいいです」
(北海道大学病院呼吸器外科 加藤達哉教授)「この影ですね。肺がんの、本当の早期だった」
(60代女性)「検診とかじゃこの小ささじゃ見つからなかったってことですよね」
(北海道大学病院呼吸器外科 加藤達哉教授)「レントゲンでは映らない影、しかも大きさが4ミリなので。この段階で見つかって手術できたのは本当によかった」
(吉岡記者)「がんという診断を受けてどうでしたか?」
(60代女性)「最初はちょっと実感がなくて、軽い気持ちで今回の検査を受けたので、よもや自分が肺がんの疑いがあるなんて思いもしなかった」
”がんリスク”が分かる「最新技術」これが全貌!
この女性の言う「軽い気持ちで受けた今回の検査」というのが、実はいま注目されている、最新の「がんリスク検査」なのです。
それが、尿でがんのリスクがわかる検査キットです。
採取した尿と病歴や生活習慣などの情報を送るだけで、がんのリスクをAIが判定する、世界初の検査です。
最大7種類のがんリスクを一度に調べることができます。
検査キットはドラッグストアで購入可能!
(吉岡記者)「最先端の検査でありながら、もう私たちの手に届くところまで来ているんです。売り場には検査キットが大きく展開されています」
このドラッグストアーでの販売価格は税込みでおよそ7万円…!
しかし、取り扱いを始めて以降、問い合わせは非常に多いといいます。
(サツドラHD広報 後藤さん)「現役世代で仕事が忙しくて中々検査にいけないという方も、自宅で簡単に検査ができるということと、夫婦で健康に気をつかっている方からの問い合わせが多い」
この最先端技術のポイントは、尿に含まれる「マイクロRNA」という物質です。
がんになると「マイクロRNA」の組み合わせが変化することに着目。
それをAIが分析し、がんリスクを判定するという画期的な技術です。
結果が送られてくるのはおよそ1か月後。
リスクが高い判定が出たら病院での精密検査を行い、異常があれば早期治療へ…という仕組みです。
北海道は肺がん検診率「最下位」その要因は地理的な特性も…
このキットを開発したのは、名古屋市に拠点を置くベンチャー企業です。
この日、後志の港町・岩内町を訪れていました。
(名古屋大発ベンチャークライフ 松本尚樹さん)「北海道は広大な土地、面積当たりの医療機関が少ない現状になっています。がん検診を受けたくても近くに受けられる施設がない」
最先端の技術を開発した企業が北海道に注目する理由。
それは「がん検診率」です。
死因1位の肺がんの検診率のデータを見ても全国最下位。
その著しい低さは明らかです。
なかでも人口およそ1万1000人、札幌から車で2時間、積丹の西に位置する岩内町は、肺がん検診率わずか5.9%。
死亡率も特に高い地域ともいわれています。
ただ、町民に話を聞いてみるとその事情も見えてきました。
(2回検診を受けた人)「ちょっと検査がつらかったので(定期的には)受けていないね。兄弟とか親がなっているので、自分もなるんじゃないかと心配はある」
(検診の経験がない人)「私はまだ受けていないです。1日かかる時間とか考えたらどうなのかなと」
(数回検診を受けた人)「会社の健康診断で受けました。あんまり周りの人は受けていないのかなと思います」
マチで唯一の総合病院。
横山院長は、岩内町の地理的な特性も検診率が低い要因と考えています。
(社会福祉法人岩内協会病院 横山和之院長)「検診率が低いのは一概に患者の意識の低さではなく、多少(意識が)低くても5分で行けるところにあればなんとなく行く人が増える。なんともないのに苦しい検査っていやなんですよ。なんともないのに時間のかかる検査っていやなんですよ。でもなにかあるかもという風に簡便な検査で言われると、その次の精密検査は受けやすいのかなと」
そこで、岩内町の病院と最新の技術を開発した企業、そして北大病院がタッグを組みました。
(名古屋大発ベンチャークライフ 松本尚樹さん)「がん検診を受けていただくきっかけを提供できればと、ことし(岩内町に)100キットを無償で提供させていただいた。がんのイメージを虫歯の治療みたいな形でイメージを変えていければなと」
検査キットから「早期発見・早期治療」を実現 次の課題は?
岩内町民やマチにゆかりのある100人にキットを無償提供。
そのうちの1人から超早期の肺がんリスクが見つかったのです。
それがあの60代の女性です。
(北海道大学病院呼吸器外科 加藤達哉教授)「肺がんの、本当の早期だった。この段階で見つかって手術できたのは本当によかったと思います」
早期発見に結び付いたこの夫婦は、技術の進歩に驚きながらも正直な実感も口にします。
(60代女性の夫)「たまたまニュースでことしのノーベル賞のマイクロRNAですか。たまたまニュースで見てそうなんだと」
(60代女性)「これは毎年受けた方がいいのかなとか。でも高額だよなとか。でもこれでがんが進行してしまった後に見つかったら、もっともっとお金が必要になるのかなとか、いろいろなことを考えていました」
がん治療の鉄則「早期発見・早期治療」。
命はお金に変えられませんが、次の課題はその「費用」。
「最新の技術」がより身近に広がるカギはそこにありそうです