北の海の厄介者?だった「オオズワイガニ」大阪で大ブレイク!“海の異変”で食卓も変化2024
2024年は、サケやコンブといった北海道を代表する食材が不漁でしたが、新たに「全国区」となった食材があります。
私たちの食卓に変化がみられた「海の異変」を取材しました。
スケソウダラは順調!いまが旬の北海道の味覚
まだ日の出前の早朝、1隻の船がえりもの漁港に戻ってきました。
水揚げされたのはー
(漁師 堤明光さん)「スケソウダラです。20トンぐらいかな」
いまが旬のスケソウダラ。
12月上旬からとれはじめ、漁は順調だといいます。
ただ、北海道を代表する食材には異変も生じていました。
食卓に欠かせない「サケ」は減少 原因は?
12月に札幌市内では斜里町の漁師たちがあるイベントを開催しました。
(道民)「高くてなかなか手が…この何年間か高いような気がしますね」
(道民)「残念ですね。おいしいし。庶民の食べ物であっていただきたいです」
(道民)「とれないのも困りますし高くなるのも困りますし」
大勢の客のお目当てはサケ。
切り身やいくらの醤油漬けが並びます。
こちらの鮭いくら丼は無料で100食限定でふるまわれ、早速、舌鼓を打つ人の姿も見られました。
朝食におなじみのサケは、食卓に欠かせない魚ですがー
北海道にやってくる秋サケは、2004年のおよそ6057万匹をピークに減少傾向が続いています。
2024年は1703万匹の予想となるなど、平成以降最少の見込みです。
イベントを企画したサケ漁師はー
(北洋共同漁業部 伊藤正吉さん)「海水温の上昇でとれ方がちょっと変わってきているんじゃないかなと感じます」
10年前のわずか6%…過去最低レベル
2024年の秋サケ漁です。
沖に仕掛けた定置網を引き揚げてみてもー
かかっていたのは、ほとんどがブリ。
そしてクロマグロ。
本命のサケはわずか11匹に留まりました。
えりも漁協の漁獲量は今季、過去最低レベルの271トンです。
これは10年前のわずか6%に留まります。
国内生産量のほとんどを占める道産コンブも不漁でした。
(漁師 銅谷虎二さん)「思うような日数がとれなかった。コンブ一本の人は大変。コンブだけでは食べていくのはちょっと苦しくなっていく」
量がとれない分単価が高く、助かった側面もあるようですが、期待通りの漁獲量ではありませんでした。
ただ、そんなピンチを補う存在に躍進したのがこちら。
漁師たちの意外な救世主登場?
日高地方の沿岸で2023年6月から大量発生し始めたオオズワイガニです。
実はこのオオズワイガニ、日高の漁師にとって2023年は厄介者でした。
(様似町の漁業者)「カレイ目的の刺し網に余計なオオズワイガニが山ほどかかる。口の周りの網をかじってぼろぼろにするんだわ」
網を食い破るほか、小ぶりなため食べられる部分が少ないなど、大変な目にあわされたといいます。
しかし今や、この地区になくてはならない存在に―
(漁師 堤明光さん)「オオズワイガニも大きくなって値段が上がり、助けられています」
評価が180度変わった背景には、全国的な人気の高まりがあります。
食の都・大阪ではー
(森永記者)「大阪市内のスーパーです。海鮮コーナーで目に入ってくるのは松葉ガニ。その横には北海道産のオオズワイガニが売られています」
やっかい者のオオズワイガニが、なんと大阪にー
山陰を代表する海の幸・松葉ガニは2万円で売られていましたが、隣に箱一杯に並ぶ北海道産のオオズワイガニは、松葉ガニのおよそ10分の1の価格・2000円を切っています。
並べてみても、色も形も大きさまでそっくりです。
2024年のオオズワイガニは大きく成長し、食べられる部分も増えたといいます。
(客)「安いので使いやすい。北海道で安く売っていると聞いたので送ってほしいですね」
この店では2023年の末からオオズワイガニを売り始めて、当時の価格は10匹で980円。
徐々に市場価格も上がってきましたが、依然として買い求める客は多いといいます。
(たこ一 緑橋店 佐々木健晴さん)「松葉ガニが豊漁なんですけど、オオズワイガニが安いのであっちに流れていっている。本当にカニなの?という質問はよくありましたけど、それにめげずに売り続けても売れていたので、これはおいしいカニです」
大阪の居酒屋で注文殺到!「実がプリプリ」
このオオズワイガニ熱は大阪市内の居酒屋でも。
(客)「カニ1つ!」
(客)「うまそ!!」
男性客が注文していたのは、北海道産のオオズワイガニ。
ほぐした身が甲羅にふんだんにのって価格は1800円。
(客)「カニみそもうまい。こんなバクバク食べていいもんじゃない」
(客)「北海道の人とれすぎて困っているという話。もっともってきてよ」
こちらの女性グループもオオズワイガニを注文!
(客)「身がプリプリ」
(客)「高い店でしか見ないから立ち飲みでこんなのがあるのは珍しい」
専門家は、暖流の動きの変化が海の異変を引き起こしている可能性を指摘します。
(北海道大学 安井肇名誉教授)「高水温の塊のようなものが日高沖とかえりも沖とかに居続ける。ヒダカコンブとか釧路にいるナガコンブとかは高水温の影響はより受けやすい。すごく枯れるのが激しくなる。秋にサケが戻ってくるときに高水温のままなので、サケとしては自分の生まれた川に戻りづらくなっているんじゃないか」
ひと昔前とは変わりつつある海の環境。
深刻化する異変にどう向き合うかが問われています。